日本の登山、第1次の登山ブームは1956年。日本人が8000m峰マナスルに登頂成功があったんだとか。
その後、じわじわと登山愛好が広がり、今は大きく2つの流れがあります。
- 本格登山
- 高い山、雪山、難易度の高い山を求めて登る
- レジャー登山
- 比較的低い山で、自然を楽しむために登る
で、この記事は2番目の「レジャー登山」が対象です。
一般的にこういう山を低山といいます。
しかし、低山だから安全ということではないのです。
むしろ、遭難件数は低山のほうが多いのです。
この記事では、低山って何ということからは始まり、低山登山のリスクと、その対策についてまとめてみました。
そもそも低山とは・・・
低山について、公的な定義はありません。
ごく一般的には「標高1500m」を堺に、「高い山」「低い山」と区別する向きが多いようです。
また、次のような区分で認識する向きもあります。
- 低 山:標高1000m未満
- 中低山:標高1000m以上、2500m未満 ①
- 高 山:標高2500m以上 ②
こ本記事では、標高1000m未満とせずに、もっと低い山「標高500m未満」の山々を低山と呼ぶことにします。
以下、本記事では「低山」と括弧付きで表記しますね。
これらの「低山」は、「里山」とも呼ばれ、人々が住む麓に隣接して、前述①や②の中低山、高山などと比べると、登りやすい山々です。
みなさんの地元にも、身近に標高100m台の「低山」があるのでは?
しかし、これらの「低山」は「低いから安全」ということでは無いのです。
むしろ、低いからこそ危険性の認識が薄く、かえって危険でもあるのです。
そんな「低山」の「3つのリスク」と「8つの対策」について説明しますね。
「低山」登山の3つのリスク
「低山」登山における主なリスクは、次の3つ。
- 道迷いによる遭難!
- 道迷い、滑落
- 虫や獣による被害!
- 蜂、蛇、猪、熊 etc.
- 遭難しても発見されにくい!?
- 普段から入山者が少ない
これらの3つのリスクは、最悪、命を落とす場合があります。
これらのリスクとその対策をしっかり理解したいところです。
道迷いによる遭難!
山の遭難には、突然の天候悪化、滑落など色々な原因があります。
しかし、遭難の原因別統計によると、一番多い原因が「道迷い」です。
「道迷い」とは、本来通るべきルートを見失った状態です。
踏み跡のない、つまり、道なき道を進んだ結果、現在地が分からなくまったり、分岐点での選択をミスって本来のルートを外れるなどして、「あるべきルート」に復帰できない状態です。
この「道迷い」は標高100m台の「低山」でも、あり得る事態です。
むしろ、しっかり登山道が整備された人気のある中低山などより、その危険性は大きいといえるかもしれません。
何故なら、登山者が頗る少ない低山などでは、登山道整備が間に合っていない場合があるからです。
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登山において、感を頼りに進むべき方向を決めてはいけません。
「道に迷った」という状態を「いちはやく察知する」ことも、登山に必要な能力のひとつです。
虫や獣による被害!
登山における怪我などの類で、一番多いと言われているのが蜂刺され。
ススメバチが原因で命を落とす場合もあるので、スズメバチの習性や対策の知見が必要となります。
また、ヤマヒル対策。ヤマヒルは強引に取ってはいけないなどの知見も知っておくげきでしょう。
猪や熊も怖いです。決して十分とはいえませんが、熊鈴などで対策しましょう。
遭難しても発見されにくい!?
好き好んで遭難する人はいません。
しかし、不測の事態などで遭難してしまうことがあります。
遭難したとき、一番怖いのは、助けを求められないことが有るということ。
ソロ登山(単独登山)時に、滑落して意識を失ってしまえば、遭難を伝えるすべがありません。
意識はあって遭難の認識があっても、スマホの電波が届かない場合や、スマホの充電切れ、あるいは転落などでスマホをなくした・・・などで連絡が取れなければ、遭難を伝えることができません。
さらに、登山計画未提出であったり、登山の詳細を家族や知人に知らせていないと、発見が大きく遅れることになります。
そんなこんなで、遭難してしまったけど発見されにくいというケースがたくさんあるのです。
低山登山、8つのリスク対策
「低山」登山について、前項で「3つのリスク」について書きました。
詳細に突き詰めると、リスクはもっと増えるかもしれません。
ここでは、主だった3つのリスクを前提に、これらのリスクを回避するための「8つの対策」を示します。
- 登山計画をつくる
- 登山スタート前に、登山計画を提出する、もしくは家族・知人に登山の詳細を知らせておく
- ソロ(単独)登山をしない
- 初心者のうちは、ソロ(単独)で登山しない
- スマホ登山ソフトの活用
- スマホの登山ソフトを活用し、暫時、ルート確認する
- 道迷いしたら、すぐに戻る
- 道中、迷ったらと思ったら、躊躇せずに来た道を戻る
- 体調悪くなったら、安全ルートで下山する
- 疲れたり、体調の悪さを感じたら、無理をせず、安全なルートで下山する
- 登山に適した装備をする
- 登山にあった装備・服装、充電バッテリーなどを整える
- 登山に十分な飲食等を携行する
- 登山中の消費に十分な飲料、携行食、食事を携帯する
- 登山経験を次に活かす
- 登山終了後に、今回の登山の問題点とその回避方法をメモしておく
① 登山計画をつくる
筆者は、「8つのリスク対策」のなかで、これが一番大切だと考えています。
これから登ろうとする山が、たとえ地元の「低山」であっても、その「低山」に対して十分な情報を持っていなければ、思いつきで登山はすべきではありません。
予想外の事態(つまり、遭難時)に、適切な対応ができなくなるからです。
十分な情報とは次のようなことです。
- その山の登山口(登山口は下山口にもなります)は、いくつあって、今日はどの登山口から登り、どの登山口へと下るのか
- 今日の山行(登山開始から登山終了まで)の具体的ルートと、その距離や平均的にかかる時間はどのくらいなのか
- その距離と時間は、今の自分の体力に見合っているのか
- 万一のため途中から下山するエスケープルートはどこにあるのか
- 日没になってしまうリスクを避けた余裕のある山行をするためには、何時に山行をスタートし、途中のポイントなどの通過時間(山行が順調かどうかを途中で検証するために)、山行ゴール時間を計画しておく
- などなど・・・
あなたが登山初心者の場合、次の項目「ソロ(単独)登山をしない」はとても重要なリスク対策となります。
その場合は、あなたの登山に同行してくれるベテランさんに登山計画をつくってもらうワケですが、その場合でも、ベテランさん任せにするのではなく、登山の事前に、その登山計画の内容をしっかり理解しておきましょう。
さて、あなたが経験を重ねて、「ソロ(単独)登山をしない」状況から「ソロ登山」や「初心者さんを連れての登山」をするときには、あなたが登山計画を作成することとなります。
このとき、大切なことは、登山をする事前に、その登山計画を都道府県などに提出するとともに、家族(身近に家族がいない場合は、近しい知人)に知らせておきましょう。
こうすることによって、万一、あなたからの連絡がなく予定の時間に帰宅しなければ、「遭難かもしれない」とすぐに家族が警察に捜索届けをするという行動を取ることができます。
もし、家族が「あなたが登山に行ったことは知っていても、その登山の詳細を知らされていない」場合、警察に捜索届をしても、具体的にどのあたりを捜索したらいいのかが分かりません。
具体的な登山計画の作成と提出について
スマホの登山ソフトで「YAMAP」や「ヤマレコ」があります。
これらのソフトで具体的な登山計画を作成することができます。
そして、その登山ソフト経由で、登山計画を都道府県に提出したり、家族にメールすることができます。
また、登山ソフトで登山計画をつくれば、過去の登山計画を活用して、新たな登山計画をつくったり、自分の体力に合わせて、平均的な登山時間の8割で計画してみようとか、7割で計画してみようということが簡単にできます。
登山ソフトでの登山計画作成については、別途、機会があれば記事にしたいと思います。
② ソロ(単独)登山をしない
1人で登山することを「ソロ登山」といいます。
実は、ベテランさんであっても「ソロ登山」は好ましくない・・・とも言われています。
「ソロ」だと、万一の対処が遅くなる、あるいは不十分になるからです。
ベテランさんでもそうなのですから、特に、登山初心者の場合、「初めての山をソロ登山する」ことは厳禁と考えましょう。
つまり、登山経験が十分な方と同行することをオススメします。
さて、地元の「低山」をソロ登山できると判断する目安ですが・・・、怪我をしたり、気分が悪くなったときなどのエスケープルート(安全な下山ルート)をしっかり分かるようになってからですね。
③ スマホ登山ソフトの活用
「登山計画をつくる」でも書きましたが、スマホ登山ソフトを活用することをオススメします。
山によっては、スマホの電波が届かず、電話が出来ないルートがあります。
しかし、スマホ登山ソフトのGPS機能を使うことで、電話が使えなくても、計画した登山ルートを随時、見ながら確認できるのです。
このスマホ登山ソフトのGPS機能を使うことで、道迷いのリスクを激減することが可能です。
また、スマホ登山ソフトに、登山日記を残すことで「⑧登山経験を次に活かす」を記録として残すことができます。
④ 道迷いしたら、すぐに戻る
有名所の山は、登山者も多く、登山ルートがきれいに整備されたりしています。
れ一方、地元の里山(本記事で言うところの「低山」)は、有名所と比べると登山者も少なく、登山ルートの整備が手薄になっているところもあります。
より、具体的には、整備されたルートが、進むにつれて、道が分からなくなるということは、登山では頻繁に経験することです。
スマホ登山ソフトを使っているのに、道がなくなってしまった・・・(大抵は、道を間違えたことが原因)ということがあるのです。
また、山の中には二股分岐や三股分岐といった、分岐点がたくさんあります。
そういう場合は、スマホ登山ソフトのルートで確認すればいいのですが、「えいやっ!」で選んで進んだルートが間違っているということも、頻繁に体験することではないでしょうか。
このような状態を「道迷い」といいます。
大切なことは、「道迷い」に気づくかどうか。
分岐点で選択をして数10m進んだら、スマホ登山ソフトでルートを外れていないか確認すること。
ルート外れのときは、分岐まで戻る。
スマホ登山ソフトでも確認できず。これから進むルートに道が見えなくなったら、迷わず、元に戻ること。
「道迷い」のまま進むと遭難する可能性が高くなってしまいます。
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この「道迷い」、「低山」では頻繁に経験するでしょう。
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「道迷い」で全く自分の現在地が分からなくなったときの鉄則。
- 無闇に下ることなく、上って尾根を目指す
⑤ 体調悪くなったら、安全ルートで下山する
登山をしている疲れ切ってしまったり、体調が悪くなったりすることがあります。
このとき、重要になるのが安全なルート(エスケープルート)から下山すること。
当然、登山する前、登山計画をつくる時点でエスケープルートをしっかり確認しておくことです。
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安全な登山のためには、頑張りすぎないことが肝要です。
つまり、疲れすぎたときや体調が悪くなったときは、無理せず、登山は中止して、安全ルートで下山します。
⑥ 登山に適した装備をする
山道とロードは全く違います。
まなので、靴については、山道でグリップが効く登山靴やトレイルランニング用シューズがあるといいでしょう。
ベテランに同行してもらっての山登りの数回は、フツーの運動シューズ(ランニングシューズとか)でもいいかもしれませんが、その数回の同行時に、ベテランさんから靴のアドバイスをもらいましょう。
ょそして、今後も山登りを続けたいと思うのならば、少し値段は張りますが、登山靴やトレイルランニングシューズを購入しましょう。
購入は山の専門店がオススメです。
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また、登山においては、冬の寒さに身体が負けないように、あるいは、汗をかいても冷えないために、アンダーウエアを専用のものにしたり、重ね着を工夫したりという「レイヤリング」が重要になります。
詳しくは別記事で書く予定ですが、一番下に着る「ベースレイヤー」、その上に着る「ミドルレイヤー」、一番上に着る「アウターレイヤー」の3つが基本。
この3つ、それぞれ求められる素材などが異なります。
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また、安全な登山のためには、適正量が入るリュックや、帽子、手袋、アイウェア(めがね)熊鈴なども必要になってきます。
また、本人確認などができる保険証・運転免許証も装備に加えておきましょう。
さらに、常備薬も。なお、糖尿病を罹患している方は、登山時に低血糖になる場合があります。登山をするにあたっては、事前に主治医と相談するとともに、万一の低血糖に備えて「グルコースタブレット」を携帯しましょう。
ラスト、スマホの電源切れは、とても怖い事態です。なので、充電バッテリーも携行します。
⑦ 登山に十分な飲食等を携行する
飲料については、季節に応じて1リットルから2リットル程度が必要となります。
さらに、簡単に栄養補給できる食品を携行します。
を携行食については、同行してもらうベテランさんから、事前アドバイスをもらいましょう。
なお、日帰り登山でも、山頂などで食事する場合もありますので、1食分程度の食事(おにぎり1個でもOK)を携行します。
⑧ 登山経験を次に活かす
「① 登山計画をつくる」・・・これがリスク対策では一番大切と書きましたが、次に大切なのがコレです。
どんなに万全で臨んだ登山であっても、なんらかのミスがあるもの。
今回そのミスが遭難などの困ったことには至らなかったものの、次回以降は分かりません。
なので、登山を終えたら、ルートと伴に、反省点を含め、気がついたこと書き残しましょう。
この反省とともに記録を残すという点で、スマホの登山アプリはオススメです。
まとめ
安全でリスク無く、「低山」登山を楽しんでいただくために「3つのリスク」と「8つのリスク対策」について書かせていただきました。
「3つのリスク」も「8つのリスク対策」も完璧ではありません。
例えば「登山を趣味にするなら登山保険に入りましょう」「ビーコンで遭難捜索時に発見されやすくなるココヘリに入りましょう」など、まだ書き足りないことがあります。
それらは後々、書く予定です。
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ここに挙げたリスクとその対策を、実践でしっかり体得して「低山」登山を楽しみましょう。
そして、「低山」登山の経験を重ねたら、少し難易度の高い山へチャレンジするのも良いでしょう。
素敵な登山ライフを実現してください!